「個人情報」とは
個人情報とは、生きている個人についての情報で、その人が誰であるかを識別できる情報です。
個人情報保護法第2条第1項では、「生存する個人に関する情報」のうち、氏名や生年月日などによって特定の個人を識別できるもの、または「個人識別符号」が含まれるものを個人情報としています。
さらに、一つの情報だけでは個人を識別できなくても、他の情報と容易に照合することで個人を識別できる場合も個人情報に含まれます。
例えば、「田中太郎」という氏名だけでは、同姓同名の人がいるかもしれません。しかし、「田中太郎・2008年5月10日生まれ・○○高校在学」のように複数の情報を組み合わせることで特定の人物を識別できるなら、全体として個人情報となります。
秘密であるかどうかは個人情報の条件ではありません。電話帳、新聞、職員録などですでに公開されている氏名や住所であっても、法律上の要件を満たせば個人情報です。個人情報保護委員会も、公表済みの情報であっても個人情報になり得るとしています。
氏名がなくても個人情報になる
個人情報というと氏名や住所を思い浮かべやすいですが、氏名が書かれていることは必須ではありません。
例えば、顔がはっきり分かる写真や映像、話者を特定できる音声、特定の生徒と対応付けられた成績なども、個人を識別できれば個人情報になり得ます。
学校が「生徒A → 123456」という対応表を持っており、成績表では氏名を「123456」に置き換えていたとします。この場合、学校は対応表を使って容易に本人を特定できるため、番号化した成績表も学校にとっては依然として個人情報です。
個人識別符号
氏名などとの組合せを考えなくても、それ自体によって個人を識別するために用いられる特定の符号を、個人情報保護法では個人識別符号と呼んでいます。
代表例には、旅券番号、運転免許証番号、住民票コード、マイナンバーなどがあります。また、生体情報を本人認証に使える形に変換したデータも含まれることがあります。例えば、顔の形状から抽出した特徴量を本人認証ができるように変換したデータや、指紋、虹彩、声紋などの一定のデータです。
マイナンバーは、住民票を持つ人に原則として一人一つ割り当てられる12桁の番号で、社会保障、税、災害対策など法令または条例で定められた手続に利用されます。
個人情報は何のために集めるのか
個人情報を取り扱うときは、まず利用目的をできる限り特定する必要があります。個人情報保護法第17条がこの原則を定めています。
さらに第18条では、原則として本人の同意なく、その利用目的を達成するために必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことを禁止しています。
例えば通販サイトが、「注文の受付、連絡、商品の配送」という目的で個人情報を取得したのであれば、氏名、配送先住所、連絡用メールアドレス、場合によっては配送用の電話番号などは、その目的との関係が分かりやすい情報です。
一方、生年月日や性別を必須項目にするのであれば、それを何のために利用するのかを別途考える必要があります。
個人データを第三者へ渡す場合
個人情報保護法第27条では、個人情報取扱事業者が個人データを第三者へ提供する場合、原則として、あらかじめ本人の同意を得なければならないとしています。
例えば、ある会社が自社の顧客データを、別会社である親会社の商品の宣伝に使わせるため渡す場合であっても、親会社だからといって自由に提供できるわけではありません。
一方、業務を行うために個人データの取扱いを委託する場合などは、一定の条件の下で第27条上の「第三者」に当たりません。
例えば、商品の配送を配送業者に委託して、そのために顧客の氏名・住所を渡す場合は、一般に個人データの取扱いの委託と考えられます。
ただし、委託すれば何でも自由に渡してよいわけではありません。配送を委託するのであれば、配送に必要な顧客のデータを扱わせるのであって、配送対象でない顧客を含む全顧客名簿を渡す必要はありません。
また、人の生命・身体・財産を守るために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合などには、本人同意なしで第三者提供できる例外も法律に定められています。そのため、重大な危険のある製品を緊急に回収するといった場面では、通常の販促目的の情報提供とは異なる判断になります。
安全に管理する
個人情報保護法第23条は、個人情報取扱事業者に対し、個人データの漏えい、滅失、毀損を防ぐために「必要かつ適切な措置」を講ずることを求めています。また、第24条は従業者の監督、第25条は委託先の監督を定めています。
具体的な安全対策には、アクセスできる人を限定する、ファイルを暗号化する、重要なファイルに適切な認証を設定する、紙の名簿を施錠して保管する、不要になった記録媒体や紙を復元困難な方法で廃棄するといったものがあります。
仮名加工情報と匿名加工情報
大量の顧客情報などを分析するとき、分析担当者が一人一人の氏名や住所を知る必要がない場合があります。そこで、個人を直接識別しにくい形に加工してデータを利用する方法があります。
個人情報保護法では、このような情報について仮名加工情報と匿名加工情報という二つの仕組みを定めています。
仮名加工情報
仮名加工情報とは、氏名などを削除・置換し、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工した情報です。
例えば、小売店が次のような会員データを持っているとします。
氏名:田中太郎
生年月日:2000年5月10日
住所:○○県△△市○○町1-2-3
購入履歴:商品A、商品B、商品C
これを社内で購買傾向の分析に使用するため、次のように加工することが考えられます。
仮ID:A7351
生年:2000年
居住地域:○○県△△市
購入履歴:商品A、商品B、商品C
分析担当者は「A7351」が誰であるかを知らなくても、同じ人がどのような商品を購入しているかを分析できます。
仮名加工情報は、法令に基づく場合などを除いて原則として第三者へ提供することができません。
匿名加工情報
匿名加工情報は、仮名加工情報よりさらに本人との結び付きを切り離した情報です。
特定の個人を識別できないだけでなく、元の個人情報を復元して本人を識別することもできないように加工する必要があります。
例えば、小売店が顧客の購買データを他社の商品開発に利用してもらうことを考えます。
元のデータが次のようなものだったとしても、そのまま提供することはできません。
氏名:田中太郎
生年月日:2000年5月10日
住所:○○県△△市○○町1-2-3
購入商品:○○社製△△ジュース500mL
購入日時:9月23日15時32分
例えば、次のように情報を粗くする(一般化)ことが考えられます。
年代:20代
地域:○○県
購入商品:飲料
購入時期:9月
実際の匿名加工では、データの内容に応じて、次のような処理を組み合わせます。
- 氏名などを削除する
- 個人識別符号を削除する
- 元のデータと結び付けるために使われていたIDを削除する
- 詳細な住所を市区町村や都道府県単位にする
- 生年月日を年代などにまとめる
- 非常に珍しい情報を削除したり、より大きな区分にまとめたりする
匿名加工情報は実際に何に使われるのか
匿名加工情報は、個人情報保護法のルールに従えば、本人の同意を得ずに第三者へ提供することもできます。
そのため、個々の利用者が誰なのかを知る必要はないが、多数の人の行動傾向を分析したい場合に利用できます。
個人情報保護委員会は、実際の利用場面として次のようなものを挙げています。
- スーパーやポイントカード事業者が持つ購買履歴を匿名加工情報にし、メーカーなどへ提供することで、どの年代の人がどの種類の商品を一緒に購入することが多いかを商品開発や販売促進に利用する
- 交通系ICカードの乗降履歴を、人の移動傾向やサービスの分析に利用する
- 病院や調剤薬局などが持つ医療情報を、医療研究や医薬品開発に利用する
- カーナビなどから得られる走行位置履歴を、渋滞予測や交通・気象サービスの分析に利用する
もちろん、「氏名を消して外部へ渡せばよい」ということではありません。匿名加工情報を作る場合には、データ全体の性質を調べ、ほかの情報との組合せから個人を推測できないかを考えて必要な加工を行う必要があります。
二つの違い
| 比較項目 | 仮名加工情報 | 匿名加工情報 |
| 本人の識別 | 他の情報と照合しなければ識別できない | 識別できない |
| 元の個人との対応 | 対応表などが残ることがある | 復元できないようにする |
| 主な利用場面 | 事業者内部での分析など | 第三者へのデータ提供など |
| 第三者提供 | 原則として禁止 | 一定のルールの下で可能 |
| 例 | 氏名を仮IDに置き換えて購買履歴を社内分析 | 十分に加工した購買履歴を商品開発用に他社へ提供 |
プライバシーマーク
Webサイトなどで「P」の形をしたプライバシーマークを見ることがあります。
プライバシーマーク制度は、個人情報を適切に管理するための体制を整え、それを運用していると評価された事業者にマークの使用を認める制度です。